2型糖尿病の方の血圧管理に関する研究は2000年より前に多く発表されています。世界に衝撃を与えた研究成果は1998年に発砲されたUKPDS38というイギリスを中心とした世界的な研究です。厳格な血圧管理と2型糖尿病の大血管障害と細小血管障害のリスクというタイトルです。この研究で、厳格に血圧管理を行うと非致死性および致死性合併症や糖尿病に関連した死亡のリスクを減らすとともに視力の悪化も減らすことが示されました。UKPDS33はSU薬とインスリンによる厳格な血糖コントロールと2型糖尿病の大血管障害と細小血管障害のリスクというタイトルで1999年に発表されました。厳格な血糖管理は細小血管障害のリスクを低下させたものの大血管障害のリスクは変わらなかったという結果でした。この結果に私は当時非常に大きなショックを受けました。2型糖尿病患者さんにおいて血糖値のコントロールよりも血圧のコントロールの方がよい結果が出たともいえたからです。

 ただ、このUKPDS33の結果は当時の2型糖尿病の薬物治療が現在のように低血糖を起こしにくい良質な薬剤がほとんどない時代であったことがこの結果につながったと考えられます。現在は低血糖の心配が少ない非常に良い薬剤が多くあります。

 思い返せば、わが国は1980年以前は脳血管障害が死因の第1位でした。脳血管障害を減らすために高血圧の治療と減塩することが重要であることが啓発されました。高血圧の治療も進歩したこともあり、脳血管障害は減少してきました。現在では死因の4位です。