現在使用されている糖尿病の内服薬は、膵臓に作用してインスリンを出方を刺激して血糖値を下げる薬と膵臓以外に作用して血糖値の上昇を抑える薬に大別されます。

以前、世界的に糖尿病の主流となっていたSU薬(スルフォニル尿素薬)はインスリン分泌を促進する薬ですが、血糖値が下がり続けてもその作用が続くため低血糖が生じることがよくありました。食直前に1日3回内服して食後に血糖値が上がる短時間のみ効果がある短時間作用型インスリン分泌促進薬もあり、グリニド薬と呼ばれています。こちらは効いている時間が短いため、低血糖の頻度は多くはありませんが、それでも低血糖が起こりえる薬です。

膵臓以外に作用して血糖値の上昇を抑える薬としては、次のものがあります。

メトホルミン薬:
1950年台に登場したSU薬とともに最も古い糖尿病薬です。肝臓や腸に働いてインスリンの効果を高めて血糖値の上昇を抑えますが、いまなお、その作用の仕方は研究され続けています。乳酸アシドーシスという重大な合併症を持つため、心臓、腎臓、肝臓の働きが悪い人、大酒家は内服に関しては慎重な検討が必要です。

α-グルコシダーゼ阻害薬:
食直前に1日3回内服し、小腸でのブドウ糖の吸収をゆっくりにして食後の血糖値の上昇を抑えます。

チアゾリジン誘導体:
インスリンの効きをよくして血糖値を抑えます。1日1回の内服です。

インクレチン薬:
食べ物が小腸に入るとインクレチンというホルモン(GLP-1とGIP)が分泌されます。これらは直接的、間接的に膵臓に作用して血糖値が高いときのみインスリン分泌を高めます。また、グルカゴンという膵臓から出る血糖値を上げるホルモンの出を抑えるように働きます。このため、食後の血糖値を抑える作用があります。1日に1回、あるいは2回内服します。週に1回の薬もあります。糖尿病の内服薬の中では薬疹の出現率が高いものです。

SGLT2阻害薬:
尿からブドウ糖の排泄を多くして、血糖値の上昇を抑える薬です。ブドウ糖とともにナトリウムや水分も多く排泄します。このため、体重減少や血圧低下などの作用もあります。通常、肥満傾向にある方にはよい作用をもたらすことが多いのですが、食事がとれないときや下痢などで脱水傾向にあるときは内服をしてもよいかを考えなければなりません。また、極端な低糖質ダイエットをしているとからだの中が糖質不足に陥り、脂肪が急激に分解されてケトン体が血液中に多くなるケトアシドーシスという状態になる重大な副作用が出ることがあります。あらかじめ、主治医にどのようなときは内服を控えるべきかを確認しておきましょう。